2007年夏に、新人物往来社発行の別冊歴史読本#80号にて執筆した「古代遺跡が語るもの;概念デザイナーが見た古代遺跡」の中で、これまで探訪してきた
日本のピラミッド山と巨石群について、その具象構造(物理的に顕現していること)と概念構造(構築の基本原理として潜象していること)を
試論として提示させていただいた。その一部を紹介したいと思う。
天然物の自然の哲理を最大限に活用した日本ピラミッド(ピラミッド山)は、宇宙や神とつながると同時に日常の生活にも深く関わる多元的な存在であると
考えている。
巨石探訪やピラミッド探索を進める過程の中で、”自分に深く関与している神々との交流”や、”その地独自の存在意義への理解”や、”時間、場所、地質の考察”などが
瞬時に頭の中を膨大に駆け巡る。
ある偉大な存在の背景には目には見えない概念の世界が厳然と存在している…と確信している。その世界にアプローチすることが現代のわたしたちには重要なのではないかと
思うのである。
表層的な物理現象や、個別の物体に目が留まる限り、背景の世界に近づくことは極めて困難である。背景へのアプローチを意識するだけでも、目の前にある巨石やピラミッド山も
また趣を変えてくるに違いない。少なくとも私はそうしながら巨石やピラミッド山を見るようにしている。
巨石探訪やピラミッド山探索がより楽しくなればいいわけだし、効果的で効率的な石巡りもできるのではなかろうか。やはり、人生は短いのだから、なるべく
良いものを多くみて、良い思索や経験を多くしたいものである。
同好の仲間に以下の提議が少しでも役に立つのならば、このうえない悦びである。
古代遺跡探究家;泰山 2007年初冬
………以下、引用………
ピラミッド山と巨石の具象構造 図-1
2章でふれた巨石の特徴のほかにもピラミッド山に関わる事象は多い。例えば、鏡石、立石、方位石、畳石などがあるし、神社や御神水も付帯していることが多い。
なんといってもピラミッド山の秀麗な山容は特筆すべきものがある。
全国各地の事例を整理してみると図-1のようになる。そこに見えてくるものはピラミッド山のもつある種の型;パターンのようなものであり、
同時にピラミッド山を中心とした構造体の存在である。ピラミッド山には拝殿あるいは拝所が伴うことが多く、またそのピラミッド山に関わる本殿的な聖山が存在することもある。
そして磐座と呼ばれる巨石群が構造体の重要な拠点や部分として意味を持つ。つまり古代遺跡としての巨石やピラミッド山は基本的に大構造体を形成するようにデザインされている
のではないかと思っている。
ピラミッド山と巨石の概念構造 図-2、図-3
古代遺跡も含めてすべての具象物にはそれを投影し顕現させているしっかりとした概念の世界があると考えている。図-2中央のコンセプチュアル・シンボルが不可視の概念世界と
可視の具象物との間に介在して、概念世界を表徴しながら具象物への展開方策を明示するものだ。紙面の関係でその詳細には言及できないが、物理現象として顕現している古代遺跡
について、その概念世界を遡及的に探究することが可能であると考えている。
図-3に仮説あるいは試論として、現在考察中の「ピラミッド山の概念構造」を提示させていただいた。ご高覧願えればと思う。図-1は古代遺跡の物理的な表層に焦点を当てた現実世界
における具象構造図であり、図-3はそうした古代遺跡の背景にある不可視な世界の概念構造図である。この概念構造を要約すると、ピラミッド山とは…
*天・地・人を結ぶ精神軸で、神憑りを通じて大神につながるもの
*火・土・水を結ぶ生活軸で、月を介して太陽を知るもの
*真理・象徴・表象の芸術軸で、巨石によって構造をなすもの
*カタチ・美・感動の生産軸で、具象物を創造するもの
*過去・現在・未来の意識軸で、記憶を活かして発信するもの
ということになる。つまりピラミッド山とは上の5軸が交叉するところにまさに存在する、あるいは構築するものということになる。ピラミッド山と巨石の概念構造については機会が
あればあらためて詳しく述べたいと思う。
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